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「明日は坂本チームとの打ち合わせがあるんじゃないの?準備はできてる?」
「……まだ全部は」
今日はもう持ち帰って、皆川さんとの約束の後、自宅で資料を仕上げるつもりだった。
だけど経費処理は会社でしかできない。
それもあと三十分で。
東条主任と言葉を交わす余裕もなく、私は返答もそぞろにキーを打ち続けた。
「そこの束かして。手伝うよ」
突如そんな声が聞こえて、机の上にあった未処理の束が抜き取られた。
「あっ、主任、いいですから!」
「でも終わらないでしょ?」
そう言いながら東条主任は精算システムを立ち上げ、一枚目の入力を始めてしまった。
「主任にそんなことさせる訳には……」
「いいからいいから。それより早くそっちの束を片付けて、坂本チームの資料やりなよ」
この時ばかりは主任の親切が辛かった。
上司に雑用を手伝わせておいて、用事があるからといってさっさと帰れない。
七時五分前、ついに私はトイレに行くふりをして席を立った。
今日は無理だと、せめて直接伝えよう。
待たせることだけはしたくない。
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