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しばらく涙をこぼしたあと、うつ向いたまま蚊の鳴くような声で答えた。
彼の前では本音を隠せなかった。
「でも、私は成果らしい成果を上げていないんです……」
「それが当たり前です。それが企画という仕事でしょう。だから非常にメンタルの負担が大きく、精神疾患が多い職種です。電機のような業界では部門で一つヒット商品が出れば上々です。その陰には無数の試行錯誤があります。無駄に見えても、あなたがやっていることには意味があるんですよ」
私のやっていることには意味がある。
その言葉を聞くと気が抜けて、涙がさらに止まらなくなった。
「きついとは思いますが、前に出て自分の力で勝負して下さい。叩かれるのも仕事です」
前に出れば自身の評価が判断にさらされる。
批判されることが苦手な私はずっとそのことから逃げていた。
「もし偶然僕と出会わなければこうして直訴することもなく、誰かに助けてもらえるのを待っていただけですか?会社は学校とは違いますよ」
やっぱり彼の言葉は手厳しい。
鼻水をごまかせなくなってきて手探りでハンカチを探していると、目の前にティッシュの箱が出てきた。
もうボロボロだ。
今朝、わざわざスカートをはいて丁寧にメークをしたのが遥か昔に思える。
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