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「女性だからといってハンデを負う不当な環境は人事の力不足ですから、あなたに罪はありません。でも、会社の隅々まで意識を改革するには時間がかかります。声を上げなければ誰にも届きません」
「でも一人対集団じゃ、太刀打ちできないです」
「それならまず味方を作って下さい。東条主任が信頼できるなら、部門の内部をよく知る彼に頼るべきでしょう。僕は外部の人間で、いつまでも居ませんから」
どうしてだろう。
皆川さんより東条主任に頼るのは当然なのに、ひどく心許ない気分になった。
しばらく私が黙っていると、少し優しくなった声が聞こえた。
「少しは落ち着きましたか?」
「……はい」
「ではコーヒーを淹れてきます」
「あ、あの……!」
自分がひどい顔なのも忘れ、立ち上がる彼を咄嗟に呼び止めた。
「皆川さんはいつまでうちの社にいるんですか?」
「一月までです」
それは予想より早かった。
まだまだ数ヵ月あると思っていたのに。
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