アメとムチ-2

18/22
前へ
/22ページ
次へ
キッチンに彼の背中が消えると、ぼんやりと放心してソファーにもたれた。 “僕はいつまでも居ませんから” その言葉を頭の中で何度も繰り返す。 何度も繰り返せば、その度に走る妙な痛みに慣れると思ったから。 でもそれはなかなかうまくいかなかった。 キッチンから聞こえてくる音に紛れ、こっそり鼻をかんでからティッシュを片付ける。 泣いたせいで、まるで泳いだ後のように頭がぼうっとした。 あんなに冷たい印象の彼なのに、ソファーのチョイスは柔らかめが好きなのか、ソファーは天国のように居心地がいい。 食器の音、コーヒーの音を聞いているうちに、泣き疲れた私の瞼はだんだんと重くなり、部屋の景色が遠退いていった。
/22ページ

最初のコメントを投稿しよう!

1584人が本棚に入れています
本棚に追加