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彼のメガネをこんなにはっきり見るのは初めてだ。
メタルだと思っていたけれどフレームだけで、テンプル部分はよく見るとセルだった。
「……手を離してもらえますか」
「……うわっ」
彼の言葉で自分が彼の腕を掴んでいることに気づき、バンザイするように腕が真上に跳ね上がった。
「すみません!」
私はソファーにもたれたまま、うたた寝してしまったらしい。
「僕の前で、あなたは寝ているか泣いているかのどちらかですね」
「すみません……」
本当にその通りだ。
出会ったその日に人生最悪の醜態をさらしたのに始まり、かける恥はすべてかいてしまった。
彼とはそういう巡り合わせに違いないし、今さらイメージ修復も無理だろう。
早く一月になっておさらばした方がいいのかもしれないと半ば開き直りで考えた。
「すみませ……っ」
腕を離したのになかなか彼が退こうとしないので再び謝ろうとした時、突然バンザイしたままの腕を掴まれ、身体ごとソファーの背もたれに押さえつけられた。
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