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「もし僕が悪い男だったらどうするんですか?」
磔にされたまま、声も出せずに彼を見上げた。
眼鏡の奥の彼の目は氷のように冷ややかで、怒っているようにも見える。
ダウンライトの光が遮られ、彼の顔がゆっくり近づいてきた。
唇に彼の息がかかり、キスされるのだと確信した時、私は反射的にぎゅっと目を瞑って身構えた。
でも、引き結んだ唇には何事も起こらなかった。
「……前にも注意したでしょう。自覚がないと」
彼の言葉に頭がすぐに反応してくれない。
心臓ばかりが彼に聞こえてしまうのではないかと思うほどに激しく打っている。
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