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ふと、捕らえられていた手首が解放され、身体を圧していた重みがなくなった。
ダウンライトの光が固く閉じた私の瞼の裏を明るく染める。
「あなたが寝ている間に、バッグからファイルを盗むことも可能ですよ」
彼の行動と言葉のギャップに頭が追い付かず、戸惑いながら目を開けると、立ち上がった彼がソファーに背中を向けたところだった。
「もう遅いので車で送ります。事前のすり合わせは車内で簡単にやりましょう」
時計を見ると、食べ終わってから一時間以上も経っている。
彼は私が目覚めるのを待っていたのだろうか?
テーブルの上にはすっかり冷めたコーヒーと、空っぽのマグが乗っていた。
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