アメとムチ-2

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「こちらです」 彼が支える寝室のドアから、腰と首だけ伸ばして中を覗く。 姿勢がおかしいけれど、こうでもしなければ傍らに立つ彼に触れてしまう。 「そんなに警戒しなくても大丈夫ですよ。お仕置き部屋ではないので」 中腰の姿勢のまま、私の呼吸が止まった。 「冗談です」 彼は真顔でそう言うと、銀色のフレームを光らせて中に入っていった。 皆川氏が言うとまったく冗談に聞こえない。 冷や汗をぬぐいながら私も寝室に足を踏み入れた。 ここもやはり余計な物がない。 見るからに居心地が良さそうな大きなベッドにサイドテーブル、書棚、クローゼット。 ベッドには大きな枕が一つだけ。 それを見てほっとしたのは何故だろう? 何となくホテルで見た彼の寝顔を思い出してしまい、頭から離れなくなった。 普段と違って棘のないあの寝顔で、彼は毎晩ここで眠っているのだろうか。 でも、女性の痕跡を見つけてしまいそうで、それ以上は視線を動かせなかった。
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