第1章 島守り

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______ 今日も簡素な身なりになってから海の前に立つ。 海の香り、波の音、泡(あぶく)。 それらは私の心臓の鼓動と重なり、血の一滴一滴に振動が伝わっていった。 身体中の水分と一体となっていくのを感じながら、うっとりと心を浸す。 しばらくしてから、私は大きく伸びをした。 そして海と太陽の光のおかげで色素が薄くなった髪を、しっかりと結わえた。 頭の後ろがキュッと引き上げられ、気持ちが締まる。 水抜きの確認をしてから、ゆっくりと全身を海の水に沈めた。 海水の刺すような冷たさに顔をしかめてしまう。徐々に水温に馴らしてから身体を倒して泳いでいく。 昔、祖母に泳ぐ姿が人魚みたいだと言われた。 それが嬉しく、また恐ろしくあった。 人ならざるものは、この島では禁忌であるから。 それに例えられた当時の自分は、かなり複雑な気持ちであった。 今は亡き祖母の思い出と共に、生業も引き継いで、私は宝珠とりをする。
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