第1章

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「ごめん、ごめん、遅くなってごめんね。 と、あなた何方ですか?」 顔をあげ声のした方を見る。 少し太り気味の大学生くらいの若い男の人が立っていて、隣に座る男の人に声をかけていた。 「何だ! お前は!?」 「俺ですか? この子のお兄ちゃんの友達です」 (え!?私のお兄ちゃんまだ中学生だよ) 「本当かぁ? オイ! こいつ知っている奴か?」 私の肩を小突き聞いてくる。 私は首を横に振った。 「こいつ、お前の事を知らないみたいだぞ。 獲物を横取りするつもりか?」 「そりゃあ知らないでしょう、会ったのは初めてですから。 俺は友達に見せて貰った写真とピンクの帽子を目印に、探し出したのです」 「だったら、兄貴の名前を言ってみろ」 「言いますけど、その前にあなたの身分証明書か名刺を見せて頂けますか?」 「何故だ?」 「当然でしょ、あなたはこの子の個人情報を求めた。 見ず知らずの人に個人情報を晒すように求めるなら、先に自分の個人情報を晒すのが礼儀ではないのですか?」 「何だと――!」 「ああ、時間の無駄ですね。 警察を呼びましょう。 俺はこの子のお兄さんに身元を証明して貰えますが、あなたはどうなのでしょうね?」 「チィ! 分かったよ! 糞がぁ! 覚えてろ!」 「俺は覚えている気はありません。 でも、其処とあそこに監視カメラがありますから、あなたの事も録画されているでしょう」 それを聞いて男の人は、慌てて顔を隠し走り去った。
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