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「ぅっ……ヒック……ヒック……ェク……ズズッ。」
──── 二月のある日の夕暮れ時。
とある小さな神社へ通じる石段の一番下で、膝を抱えて泣いている一人の少年。
「……オマエ、ドウシテサッキカラズット泣イテイルンダ?」
その少年に音もなく何処からかふらり、とやって来た一人の男が声を掛けた。
声を掛けられた少年が、ほんの少しだけ顔をあげると、男が履いているのだろう…白くてとても綺麗なスニーカーが目に入った。
「…ヒック、……好きな子に…明日ある…マ、マラソン大会…で…ヒック……その子よ、り…ック、早く走れたら、バ、バレンタインで……チョコ、あげるって……ェク、言われたの」
自身の手の甲や袖を使い涙を拭い、しゃくりあげながら答えた。
「………?……ナラバ、ソイツヨリモ早クハシレバイイダケ」
首を傾げながらも男は少年に淡々と静かに告げる。
「グスッ……無理だよ、僕……走るの遅いから、練習でもいつも、その子の方が早いもん…」
少年は多少落ち着いたのか、話していることが聞き取りやすくなった。
「デハ願エ!……オレハソコノ神社ノ神様ダ。オマエノ願イヲ叶エテヤル!」
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