70人が本棚に入れています
本棚に追加
レストランフロアによく来てくれるお客様の中に、知的障害の女性がいる。
食べに来るのはいいのだが、支払い能力がないので、お店側は来店を嫌っている。
しかし、障害者差別解消法に抵触するので、帰れとは言えない。
今回も彼女は、好物のパフェを食べに来て、お金が払えずに警備室に通報がきた。
「いつものパフェ女!何とかして!」
いつもは親に連絡して支払いに来て貰うだけなのだが、親を待ってる間に暇になるので、僕から話しかけた。
『パフェうまかった?』
「うん!また来る!また来る!」
『いいよ、おいで』
僕の発した言葉に、レストランの店長が眉間にシワを寄せて僕を睨んでいる。
『でも、約束』
「何?」
『パフェ食べたくなったら、お父さんかお母さんと一緒に来て』
「一緒に来る、約束」
『ね?約束。指切りできる?』
「うん」
『嘘つくと、もうパフェ食べられなくなっちゃうんだよ』
「やだ!!」
『だから、嘘つきにならないように、約束は守らなきゃね』
「うん」
『約束は、何だっけ?』
「お父さん、お母さん、一緒来る」
『そう。言えたね!!もう間違えないね』
「うん、また来る!」
『ちゃんと約束できたこと、話そうね』
「うん!!」
それから彼女は進化を遂げた。
始めは誰か同伴で来ていたのだが、何度も何度も支払いの光景を見せることで、パフェの値段とお金のやり取りを覚えた。
今や、彼女は一人で、1000円札を大事そうに握りしめてパフェを食べに来る。
そして、お店のどこかで僕を見つけると、全力で手を降ってくれる。
最初のコメントを投稿しよう!