急病人

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プルルルルルル。 電話の音が鳴り響く。 ガチャッと僕が出る。 『はい、こちら警備室』 「お客様が倒れました。早く来て!」 『どこ……』 ツーツーツー。 切られた。空しく響く電子音。 僕は、リダイヤルを押す。 『もしもし、警備……』 「何してるの、早く来てよ!」 『場所わかんなきゃ行けないでしょ!意識がないなら即救急車だし、意識あるなら車イス!AEDどうするとかあるし、出血あるなら救急箱だし!状況何にも言わないで切るな!!!頼るなら頼るなりに情報よこせ!できないなら自分らで対応しろ!』 僕は怒りのあまり電話に向かって捲し立てる。 上司が落ち着けと僕を嗜め、電話を変わる。 【何階のどこ?】 【4階の南東側ね】 【性別は?】 【男性ね】 【推定年齢は?】 【60代ね】 【症状は?】 【吐いてんのね?意識朦朧ね】 復唱するのには理由がある。 僕たちは、上司の復唱の声を聞きながら、救急箱を出し、除菌消臭セットを出し、AEDを収納庫から引っ張り出し、車イスを運んで来て、準備を整えていく。 そして、電話を切った上司の号令で動き出す。 【4階南東で急病人発生!男性、推定60代。嘔吐あり。意識朦朧とのこと。至急臨場、病状確認し、必要あらば119番通報せよ!】 『了解!』 車イスを持った人のみエレベーターを利用し、AEDなど必要性の高いものを持った人は階段を駆け上がる。 僕が入社してからまだAEDは起動したことないけど、意識なくなる人は結構多い。 間違った通報とか、電話突然切るとか、時間かかればかかるほど命に関わるから、本当にやめてね。 この男性は助かったから心配ないよ。
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