またね

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 お隣はすぐそこなのですが、なんだかいつもより遠くに感じるのは、やはり夜だからでしょうか。  ようやくお隣さんに着きましたが、大きな鉄門で先に進むことができません。 「ゆいちゃん、こっちこっち」  キナコが呼びます。そこには植木に隙間があり、キナコがゆうゆうと通り抜けられるほどの大きさがありました。 「ゆいちゃんは通り抜けられないけど、アクアなら行けるはずだよ」 「キナコ、ありがとう。ゆいちゃん、ごめん、しばらく一人になっちゃうけど……」  ゆいちゃんは独りぼっちになるのは嫌でしたが、アクアの願いを叶えるために我慢することにしました。 (アクア、ちゃんとマホに会えたのかしら……)  どれだけ待ったのでしょうか。月明かりに照らされた雲を見ていると、時間がどれだけ過ぎたのかよくわからなくなってきました。  後ろからがさがさという音に、ゆいちゃんは思わず身構えます。 「……ただいま」  キナコとアクアです。 「ガラスごしだけど、マホままに会えたよ」  見ると、アクアは今にも泣きそうな顔をしています。 「……とにかく早く帰ろう。ぐずぐずしていたら、新聞配達のバイクが来ちゃうよ」  ゆいちゃんはアクアを抱いて、お家へ走ります。途中から、自分の足音が聞こえていることに気がつきました。  滑り込むように家に入り、鍵をかけなおし、トイレに行ったふりをしてから、ゆいちゃんは自分の部屋に戻りました。 「……ゆいちゃん、ありがとう。マホにまたね。としか声かけられなかったけど、会えてよかったわ」  ゆいちゃんは、ぎゅっとアクアを抱きしめました。 「アクア、一緒に寝よ?  もちろんキナコも一緒にね」  涙を流しながら、アクアはうなずきました。 「人形のお仕事、おろそかにしちゃったわ。ダメね、あたし……」  アクアのひとり言をかみしめながら、上着を脱ぎ、靴下を脱ぎ、アクアと一緒に布団に入りました。キナコも喉をならしながら、布団の中に滑り込みます。  やがて、遠くで走る新聞配達のバイクの音を子守唄がわりに、短い眠りについたのです。    ゆいちゃんが学校から帰るなり、アクアに哀しい知らせを口にしました。  アクアは動きませんでしたが、なんだか哀しい顔つきです。                     
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