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 2017年2月1日    闇が広がり。満月が煌々と畑を照らしている。  寒さのあまりに死にそうだ。 「死にたいのか?」  沢尻にナイフを突きつけられる。  沢尻は野火署のモンスターコップだ。  俺は何にもしてないのに昔からコイツにいたぶられている。 「どうして、いつも俺なんだ?」 「おまえが気に食わないからさ」  悪臭の漂う廃棄室。向日葵村にある介護施設『彼岸花』の裏手にある。  糞の包まれた紙オムツがバケツの中に大量に押し込まれている。この悪臭だったら死臭をごまかせる、犯人はそう考えたのかもな?  施設長の原口の死体が転がっている。  ブルドックみたく太った50代のババァだ。  全身をナイフでズタズタに切り裂かれている。  殺ったのは誰だか分からない。  きっと、いや絶対沢尻が殺ったに決まっている。 「芹沢、おまえが殺ったんだろ?」  沢尻が鮫みたいな目で睨み付けてくる。 「俺じゃないって!」 「コイツに切られたのに腹が立って刺したんだろ?」  確かにムカついていた。『フェニックス』って悪徳派遣会社から派遣され、3ヶ月で切られた。  側近の別所なんか障害者たちをボコボコに殴ったって切られないのに。派遣ってだけで扱いはゴミみたいだ。 「俺が気が弱いの、おまえならよく分かるだろ?」 「戸黒にいつも泣きついていたもんな?」  沢尻がペンライトをチカチカさせる。  戸黒は中学3年のときの担任だ。  怖そうな名前だがヒョロヒョロしたジイサマだった。今はどうしてるのか分からない。 「アイツは何にもしてくれなかった」 「俺たちにビビってたからな?誰だって権力には弱いのさ」  沢尻がニッコリ笑った。コイツの親父はT県警本部長だ。当時は野火署の署長だった。  廃棄室から出る。施設の灯りはついておらず、人の気配は全くしない。  彼岸花はデイケアサービスのみを行っており、泊まり勤務はほとんどない。家族の事情によっては夜勤になったりする。 「つーか、誰が通報したんだ?」 「山笠って女からだ」  山笠真理子…………髪の薄くなったキモい職員だ。 「来てみたら門が開いていてな?山笠はいなかったよ。疑われるのが恐くて逃げたのかもな?」 「他の奴は?」 「おまえの名前を見つけてな?好都合だって思ったよ、犯人役にはうってつけだろ?」    
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