0人が本棚に入れています
本棚に追加
D
俺は真山に諭吉を1枚渡した。
「話が分かるじゃない?アンタ、出世するよ」
ウィンクを投げてきた。
キモいババァだな。
樋口一葉が1人いるから今日と明日はなんとかなるだろう。
「ダブルストーム」
店の名前だろうか?宇都宮はジャズが有名だ。渡辺貞夫なら俺でも知っている。
腹が痛くなったので店を出てトイレへと走った。
個室に入ってドッサリ出した。
恥ずかしいカッコのままでスマホをいじる。
Googleを開き、《ダブルストーム 宇都宮》で調べたが該当しなかった。
クソッ!あのババァ!
冷静にならなくちゃな?
手を洗いながら考える。
真山自体も見張られていた可能性もなくはない。
ダブルストームは隠語?ダブルは2、ストームは嵐。松潤?二宮!?んなわけないか。
二荒山神社!!
源頼朝や徳川家康などが先勝祈願に訪れている。
霊剣伝説で有名な神社で、藤原秀郷はここの霊剣で平将門を倒したと言われている。
俺は関東バスに乗って神社に向かった。
夜更けの繁華街は若者たちでにぎわっている。
神社の向かい方にはPARCOがあり、大型スクリーンでアイドルが踊っている。
寒さのあまりにブルルと震えた。
鳥居を潜ると魔力を感じた。
鬱蒼とした林の奥へと入っていく。
ユラリユラリと首吊り死体が揺れていた。
灌木の枝に紐を結び、丹羽さんは死んでいた。
青紫に変色した舌がダラリと垂れていた。
「ウワッ!」
思わず腰を抜かしてしまった。
自殺でないことは明らかだ。
『自殺してくるよ』なんて爽やかに言う人はいないだろう。
サイレンの音が聞こえてきた。
沢尻の野郎、派遣に何か恨みでもあんのかな!?
微かにバイオリンの音色が聞こえた。
確かこの曲はリストの『鬼火』だったはずだ。
草村で鳴っている。音の正体はスマホだった。
丹羽さんのモノだろうか?
画面には《非通知》と出ている。
スマホを耳に当てた。
「ふざけんなよ!?沢尻!」
《東武宇都宮駅まで来なさい》
女の声だった。真山ではない。
「君は誰だ?」
《10分以内に来なかったら妹を殺す》
最初のコメントを投稿しよう!