哀れみは悲劇を生む

2/4
前へ
/4ページ
次へ
 「今日はバレンタインデーだな。」  「おう、そうだな…………で?   俺が言うのも何だが、女子はこぞってイケメンの元へ走るもんだ。俺には冗談でもお前がそうだとは思えんなぁ。」  「お前が言うなよ。」  「そうだな。」  いわゆる非モテ高校男子である俺達。チョコなんて夢のまた夢だと三年前には悟った。  と、たそがれる俺達の所へ一人女子がやってきた。クラスの中心にいる系の、それなりにカワイイ娘だ。手には何やら紙袋を持っている。  「ねぇ二人とも、もうチョコってあげたっけ?」  「「え?」」  この子は何を言っているのだろうか。彼氏はどうした、サッカー部の川西先輩は。  だが、俺らの間抜けな顔を見て悟ったのか、少し笑いながら話し出した。  「いや、今クラスの皆にチョコレート配ってて…………あ、モチロン義理よ?で、たぶんあんた達にだけ配って無かったと思うんだけど?」  「「貰ってないぞ!!」」  こいつ良い奴だ!!  「そっか、じゃあ………………あれ?………………ゴメーン、一個しかないや。」  そう言って紙袋から小さな市販のチョコレートを一つ取り出し机の上に置いた。  「ごめんねー、そう言えばさっき一個つまんじゃったんだ。なんとか二人で分けて………ねっ?」  可愛らしく手を合わせ、笑いながら謝られた。そんな顔をされて許さない男はいないだろう、少なくとも俺らみたいな人種の中には。  「…………どうする?」  「決まってんだろ。」  ……………そうだな。  「………お前が分け合うなんてアホなこと言うわけ無かったよなぁ!!」  「おうともよ!!」
/4ページ

最初のコメントを投稿しよう!

0人が本棚に入れています
本棚に追加