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「三本勝負、二本先取でどうだ。」
「乗った。」
昼休憩の喧騒の中、義理とはいえ女子からのチョコを掛けて立ち上がった非リア二人。退く、分けるという選択肢は当然存在しない。
「まず、あっち向いてホイでどうだ。」
「よし。」
互いに腰だめで拳を構え、相手の手の内を読む。
視線がぶつかりスパークするのが確かに見えた。
「いくぞ………。
最初はグッジャンケンホイ!!あっち向いてホイッ!!っしゃぁっ!!!」
「ガッデム!!!」
瞬殺だった。
勢い良くグーを出し、一発で上を向いたヤツはショックで膝をついた。
「よし、一勝だ。」
「ちきしょう…………じゃあ次はいっせーのーせな。」
「よしきた。」
拳を二つ合わせ、それを互いに突き合わせての構え。これを獲れば二勝だ。
「よし…………いっせーのーで3!!…っし!!」
「ちっ…………いっせーのーで1!!………うッ。」
「いっせーのーで0!!!…しゃあっ!!!」
「ぐっ……。」
負けた、あっけなく負けた。
ヤツの勝ち誇る顔がこの上なくウザったい。
「……さて、1、1だな。」
「ああ、最後のゲームだが……将棋でどうだ。」
「将棋?…………いいぞ。」
「よし、ちょっと待ってろ。」
そう言っていそいそと紙とボールペンを取り出し始めた。なぜ急に将棋なのか、それはヤツが将棋部だからに違いない。トーシロ相手なら一方的に勝てると思ったのだろうか。
だが、俺が有段者なのは知らなかったらしい。誰にも言ってないしな。
「……さて、やるか。」
「おう、やってやる。」
紙を挟んで向き合った二人。先手は譲って貰った、馬鹿め。
一つ一つ駒を動かしていくと、だんだんヤツの顔が曇り始めた。どうやら思い通りに進んでいないことに気が付いたらしいが、もう遅い。この盤面なら俺はほどなくして奴を詰ませられる。ぶっちゃけ大して強く無かった。
昼休憩も残りわずかだが、間に合いそうだ。
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