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ー☆ー☆ー☆ー
学校の最寄駅から電車で50分ほどのところ。
駅を出てすぐそれはある。
といっても、表は普通の大病院。
患者からの信頼も近所からの信頼も厚い。
けど、私が行くのはこの病院の地下にある研究室。
入口で警備員に顔パスすると、階段を降りる。
細い廊下を黙々と進んでいくと、見慣れた扉があった。
私は3年前のあの事件からずっと定期的に通っている。
瀕死の私を助けてくれたのも、
その後を案じてくれたのも梶さんだった。
だから、彼は恩人であり、少し父親のように感じてる。
実の母親や父親は、事件以来あまり口を聞いていない。
そもそもノルティは寮生活のため、
家に帰ることも少ないけど……
私が顔を合わせづらいのだ。
だって、私が弟を………。
ガチャ
私がドアの前で立ち止まっていると、向こうから開いた。
「どうしたの?早く入っておいで。」
「…………うん。」
梶 正樹(かじ まさき)47歳、独身。
昔から魔法はからっきしだったらしい。
だから今は研究室にこもり、作業をするのがメインになってる。
優しそうな顔に張り付けたような笑顔。
傍から見れば、警戒心を招きそうな人だが、
私は逆にそれが安心できた。
なぜだろう………。始めの頃は悩んでいたりもしたが、
結局それも無意味な気がしてやめた。
彼は私の恩人。それ以上は、なにもいらない。
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