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それは散々体験させられたから。とは言えずに、佐和は濡れたパンツを振って暴れた。
(……深山先生が……ゲイ?)
つまり、男を恋愛対象にする男、ということだ。
BLにハマった佐和だが、現実に同性愛者に会ったことなどなかった。だから無意識で、驚愕の目を桂に向けてしまった。
「そんな、珍獣でも見る目で見ないで下さいよ」
桂が少し――寂しそうに見えたので、佐和はすぐに謝った。
「わ、悪い……そんなつもりじゃ」
「ま、ですからね、佐和先生がうちの高校を辞めるなら、俺の方がよっぽど辞めなきゃいけない教師なんですよ」
「……どういうことだ?」
「だってそうでしょ? 俺は若い男になんか興味ないですけど、世間的にはゲイが男子校で教師をしていたら、おかしいと思うんじゃないですか? 俺がゲイだっていう事実に比べたら、佐和先生のBL好きなんて、可愛いもんですよ」
でも本当に、子供は眼中にないんで生徒に興味はないですよ――と桂は念を押した。
何度も言われなくても、それはわかる。
桂が校内で生徒を邪な目で見ているようなことは一度も感じたことがなかったし、桂が教師として優秀なことは、嫌になるほど知っているつもりだ。
「深山先生だって……辞める理由はないだろ」
佐和は思わずそう口にしていた。
桂がニヤリと笑ったのを見て、ハッとする。
「そうですか、じゃあ俺をセクハラで訴えることはしないってことですね?」
「ち、ちがっ! それとこれとは……」
「まぁまぁ、そんなに怒らないで下さいよ。佐和先生だって満更でもなかったじゃないですか」
悪魔のように妖艶な笑みがスッと近づけられ、佐和はウッと息を呑んだ。
(なんで、無駄にきれいな顔してんだよ……)
まるで、BLに出てくる攻、そのものの男。
頬が赤くなったのは、窓から差し込むオレンジの夕日のせいだと思ってくれないだろうか。
「佐和先生のお陰で、ますます学校生活が楽しくなりそうだ」
「うわっ!」
ノーパンの股間を撫でられ、全身に鳥肌が立った。
震える佐和を見て桂はニッと笑い、颯爽と化学科準備室のドアに向かった。扉を開け、出ていく直前に振り返り――。
「また、楽しみましょうね!」
エロ悪魔メガネは楽しそうに笑った。
「……二度とさせるか!」
濡れたパンツをドアに投げつける。が、すでにドアは閉まり、パンツはそのまま床に落ちた。
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