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今見かけた二人のように、特進クラスの生徒たちの大勢が運動は体育の授業だけ、という生活を送っており、大抵肌は生白い。
運動をしていなければ、当然体は細い。勉強ばかりしているのだから太りそうなものだが、なぜか柊成高校の特進クラスは痩せている生徒が多かった。
また、中学から運動部連中との関わりが少なかったせいか、それとも時代なのか、特進クラスの生徒の多くが、いわゆる男子校臭さからかけ離れている。
男臭さや埃臭さ、汗臭さや脂っぽさが少なくて、女子高生のように髪をサラサラとなびかせ、いつだって涼しそうな顔をしている生徒ばかりなのだ。
佐和自身、中学までは共学校だったが、高校は男子校でラグビー部、大学は理工学部に進学したため女子学生は数えるほどしかいない男子校のような環境で育ってきた。だからこそ、佐和は男子校の真実をよく知っている。
BLの男子校が、現実には絶対に存在しない、ということを。
だが、特進クラスの生徒たちを見ていると、それがしばしば揺らぐ。
学ランがだぶつきそうな華奢な体。サラサラの髪。汗なぞ掻かんのか? と聞きたくなる滑らかな白い肌。
ここはドイツのギムナジウムじゃない! と佐和を苦しめる。
はぁ、と佐和は大きく息を吐いた。
「佐和センセー、おっはようございま~す」
「おわっ!」
ガックリと落ちた佐和の肩が、暴力に近い強い力で叩かれ前につんのめった。
なんとか踏ん張り、後ろを振り仰ぐ。
「危ねぇだろ、川上!」
「ごっめん、佐和ちゃん。……大丈夫?」
平気で教師をどついたくせに、川上は心配そうに佐和を覗いた。
いや、おおらかな性格の川上に佐和をどついたつもりはないのだろう。平均的な男子高校生より余分についた筋肉のせいで、ちょっと肩を叩いたつもりでも、暴力になってしまうのだ。
(……て、心の優しい大型動物かよ!)
川上尚紀(かわかみなおき)は佐和より、桂よりもまだ背が高い。体躯もガッシリしていて、胸板などは佐和の二倍はありそうだ。
「川上~、佐和ちゃんいじめんなよ」
「あ~あ、佐和センセ泣いちゃってんじゃん。鬼だな、川上」
その後ろからゾロゾロと、川上と同じぐらいの上背の生徒たちが現れる。それとともに周囲の空気がムッと暑苦しくなり、佐和はホッと息を吐いた。
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