白い太陽と褐色の尖塔

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1  魔界の草原にそびえる4本尖塔の城。  それは広大な楓林をいくつも越えた古戦場の中にあった。  徒歩ならば、落日前には帰れない悩ましい距離。  そこで彼らは、脚の早い馬か簡易駆動車かの選択を迫られることになる。  栗毛馬なら11歳のハクテイでも跨げるが、駆動車なら16歳以上にならないと運転できない。条件を満たすのは上級生のリュウファンだけだ。16歳以上の生徒はたくさんいるけれど、楓林地帯の向こう側まで一緒に連れて行ってくれるのは、彼だけなのだ。  学校が引けたあと、ハクテイは校門の前で友だちに声をかけた。 「きょう、カエデ城に行く人は?」  彼の仲間は10人くらいいたが、首を横に振る者が多かった。 「えー? なんで行かないのさ。明日は学校、休みなのに・・・」  ハクテイは戸惑いの表情を浮かべた。  茶色い毛糸の帽子をかぶった少年がハクテイに近寄った。 「うちは親が厳しくてさ、ハクテイと一緒に遊んじゃダメだって怒られた。でも学校の中ではともだちだよ」  帽子の少年はさびしそうに笑うと、駆け足で行ってしまった。 「おいらの家も父ちゃんが怖くて。父ちゃん、カエデ城のこと知ってるらしくて、あそこにはニ度と行っちゃいかんて、怒鳴るんだよ。魔界の草原に行ったら、清く正しく美しい生活はできないからだって。ごめんよ、ハクテイ」  茶色の毛編み服の少年も、気まずそうに言い訳をした。  ハクテイの友人たちは次々と去っていき、ひょろっと背の高いセイロクと、度の強い眼鏡をかけたシコンのふたりだけが残った。 「けっきょく、いつもの三人が残ったね。おれとシコンは、ハクテイといっしょにに行くよ」  セイロクが万歳しながら背を伸ばした。 「セイロクのお目当てはハクテイの姉ちゃんだろ。ホンチュンは美人だし、体の線も色っぽいしね」  眼鏡のシコンが生意気そうにに笑った。
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