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「へん、そんなことないよ!リュウファン先輩の方が熱を上げてるんだよ!」
セイロクは頬を染めながら反論した。
ハクテイがあいだにはいった。
「僕らの興味は、カエデ城の菓子とテトラプリズンの謎ときだろ。6本で待ち合わせだよ。リュウファン先輩は、きょうは行くって言ってたから、駆動車に乗れるよ!」
「やったあ!」
セイロクとシコンが同時に叫んだ。
「6本場所だね、必ず行くよ!」
6本場所とは村はずれにある小高い丘のことだ。そこからは遠くのカエデ城の4本の細い尖塔が薄茶にかすんでいるのが見える。
4本の尖塔はひし形に配列されており、視界の角度にによって本数が違って見えるのだ。ときに風のいたずらで5本になったり6本になったりすることがあった。彼らは、太古の亡霊がカエデ城に憑依していると信じている、だから6本の時もあると。
リュウファンの駆動車は小型だ。ハクテイの姉を含めて5人が乗ると車内はかなり窮屈だが、駆動輪の振動が伝わると、誰も文句を言う者はいなかった。
車は茶褐色の雑木林の中を走った。
雑木林を抜けるとコルク色の草原が広がった。空は淡い杏色で雲ひとつない快晴であった。
繰り返す大規模な地殻変動と気象変動、それに加えて核爆弾の想像を絶する破壊は、多くの国家を滅亡させた。核爆発による灰塵は、厚い層となって大気に浮遊した。
大地に降り注ぐ太陽光が遮断されると、地表は寒冷化し、灰色の世界に変貌した。
赤や黄色、青、緑、紫とさまざまな色彩が消えたあとも、人々はかつての華やかな色を追い求めた。
色は欲望を象徴した。
色が民衆を堕落させ、争いで人が死ぬ。
この世から色を取り除き、清く正しく美しくを全うする世界。
突拍子もない論理が一部の人々に受け入れられると、彼らは先端技術を駆使して、閉鎖空間をつくりあげたのだ。
それが白い太陽と茶色の世界だった。
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