白い太陽と褐色の尖塔

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 清く正しく美しく。  その教えが浸透していくには、さらに長い年月を必要とした。  駆動車は、起伏の激しい悪路をがたがたと派手な音をたてながら乗り越えていく。車内は上下左右に揺れるが、そんなことにはおかまいなく少年たちは騒いでいる。 「あんたたちはしゃぎすぎよ!静かにしなさい!ほんとにうるさいんだから」  教えに忠実なホンチュンが後ろに振り向いた。  駆動車は楓林を抜け、また別の楓林に入る。冬枯れした小枝の隙間から、城の4本の尖塔が見え隠れしている。  白い太陽が褐色の尖塔の真上にさしかかっていた。      2  城番の男は、駆動音を聞いた。  おお、来た来た。  男はしわの深い顔をほころばせた。  彼を乗せた車椅子は厨房に入った。黒釜から甘く香ばしい匂いがこぼれている。  テトラ解放軍の元司令官にしてカエデ城の城番。  誰が名付けたか、人々は彼を侯爵さまとも呼んでいる。  老いた侯爵は、黒釜の鉄蓋を開けた。  焦がし芋。大きな鍋用手袋をはめて、焼き上がったばかりの芋を割ってみる。飴色の断面から甘い匂いが立ち上る。  そしてもう一つ。   
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