またたね

3/15
前へ
/15ページ
次へ
順子はあの頃のようにあきれ顔で言った。 さすが、よくぞ聞いてくれた! という喜びを隠しながらとぼけて俺はハイボールをグイッとあおって一呼吸おいてから聞き返した。 「何の事?」 「どうせまた仕事辞めたんでしょ?あなたが急に飲みに誘ってくるときは大体そう」 「やっぱりわかる?さすがだな」 順子の呆れ顔に少し笑みが入り混じった。 彼女は俺が5年前に別れた元嫁である。 よくあるキャバクラ店の仲が良い嬢とボーイの関係から始まり、 23の時に勢いで籍を入れ、 43の時に離婚した。 順子は俺の8コ下だった。 原因、 というよりは分岐点はいろいろあった。 一つは子宝に恵まれなかった事だと思う。 俺も水商売の人間だし、 そこらのサラリーマンよりかはよく妻を抱いていた方だったとは思うが、 一向に妊娠の兆候はなかった。
/15ページ

最初のコメントを投稿しよう!

2人が本棚に入れています
本棚に追加