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「ああ、こちらです。」
ジャージ姿の洸一が入室した。杏奈の
ベッドサイドで彼は何か言おうとしたが、
彼女は起き上がり、洸一に広げた両の掌を
差し出して遮った。
「待って。まだ何も言わないで。まず、
あたしに言わせて。」
男子マラソンは杏奈も見守る中で洸一が
二位以下に大きく差をつけてトップで
スタジアムに戻ってきた。彼はそのまま
フィニッシュしてオリンピック二連覇を
達成したのだ。
「優勝おめでとう、こーちゃん。」
「ありがとう。だけど、どうしたの?」
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