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ピピピピッと枕元に置いた携帯のアラームが鳴り、止めようと慌てて伸ばした手は携帯には届かなかった。
「おはよう」
一瞬早く携帯を掴んでアラームを止めた裕也さんの声が耳元で聞こえた。
ああ、好きだなあと思う。
まだ少し寝ぼけたような声も、吐息が私の耳をくすぐるのも。
『おはようございます』と堅苦しい敬語を使っていた一週間前までとは全然違う、柔らかい雰囲気も。
「おはよう」
私もまだ慣れなくてぎこちない挨拶を返す。
まだ慣れないのは、この状況もそうだ。
真冬だというのに、全裸で後ろから裕也さんに抱きしめられている。
一晩中、腕枕をしていて裕也さんの左手は痺れないんだろうか?
そんなことを心配していた私は、お腹に回されていた裕也さんの右手がゆっくり這い上がって来たことに気づき、思わず自分の右手で動きを封じるように押さえた。
「お弁当と朝食を作ります。洗濯もしないと」
この一週間というもの、毎朝、裕也さんに流されて家事が疎かになっている。今日こそちゃんとやらないと。
そんな決意を打ち砕いたのは、裕也さんの甘い囁きだ。
「大丈夫。洗濯は僕がやりますから、今から少し愛し合っても間に合います」
「でも……」
”愛し合う”という言い方をされると断れなくなる。
一週間前にやっと心が通じ合ったばかりの私たちにとって、”愛し合っている”ことを確かめ合うのは大切なことだと感じるから。
「いざとなったら弁当もいりません。朝食よりも飛鳥さんを食べたい」
夫にきちんと朝食を食べさせなきゃダメなのに。
頭ではわかっているのに、弱い私は今日も裕也さんの誘惑に抗えなかった。
「あ……んんっ!」
窓から差し込む光が、日の出を過ぎたことを教えてくれる。
「かわいい。飛鳥。……僕の飛鳥」
律動を繰り返す裕也さんが、愛しそうに目を細めて私を見つめる。
朝日の差す明るい部屋で、こんな風に乱れる姿を見られるなんて恥ずかしすぎるけど、感じる自分を抑えることは出来なくて。
絶頂に駆け上った後のぐったりした身体で、(せめて遮光カーテンに替えようかな)なんて思った。
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