僕のバックアップデータ

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 この旅行が終わったら、パパはおうちを出ていきます。  ある日僕は、「パパとママ、どっちと暮らしたい?」ってきかれました。答えられなくて困っていたら、結局ママと暮らすことになりました。  パパとママが毎日喧嘩しているよりも、そのほうがずっと僕のためになるんだって。  それから僕がずっと沈んでいたら、学校の先生がいいました。 『思い通りにならなくてつらいことがあっても、人間には記憶力と想像力があるから、大抵のことはなんとかなるんだ』って。  だから僕は、今日一日を一生懸命覚えていました。泣きたくなるヒマなんかありませんでした。  新幹線のカッコいいフォルム。  アイスクリームの舌でとろける感触。ミルクの匂い。  六百二十種類もの海洋生物たちは、頑張ったけど覚えきれてないかもしれません。
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