4 「じしん」にグラリ

15/21
前へ
/37ページ
次へ
そのせいだろう。 その日の自主トレは、 自分から先輩の好きな物をご馳走すると言っておきながら、どこか上の空。 そして、 「おい、マイカ。にんにく、何個剥くんだよ」 そう言われて、はたと我に返った。 それと同時に、視界の景色がはっきりとしてきて、私はにわかに慌てた。 「え、えっとぉ……、何個、剥くんでしたっけ?」 「1個で十分だよ」 苦笑しながら言われたが、 私の目の前には、すでに5、6個の白いニンニクが転がっている。 「まぁ、いいや。残りは、素揚げにでもして食おう。 ってか、何かあったか?」 さすがにここまでぼんやりしていれば、誰でもそう思うだろう。 それでも、私の心臓はギクリと大きく跳ねた。 そしてその拍子に、言葉まで頭から吹っ飛んでしまった。
/37ページ

最初のコメントを投稿しよう!

22人が本棚に入れています
本棚に追加