22人が本棚に入れています
本棚に追加
そのせいだろう。
その日の自主トレは、
自分から先輩の好きな物をご馳走すると言っておきながら、どこか上の空。
そして、
「おい、マイカ。にんにく、何個剥くんだよ」
そう言われて、はたと我に返った。
それと同時に、視界の景色がはっきりとしてきて、私はにわかに慌てた。
「え、えっとぉ……、何個、剥くんでしたっけ?」
「1個で十分だよ」
苦笑しながら言われたが、
私の目の前には、すでに5、6個の白いニンニクが転がっている。
「まぁ、いいや。残りは、素揚げにでもして食おう。
ってか、何かあったか?」
さすがにここまでぼんやりしていれば、誰でもそう思うだろう。
それでも、私の心臓はギクリと大きく跳ねた。
そしてその拍子に、言葉まで頭から吹っ飛んでしまった。
最初のコメントを投稿しよう!