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トワは、プレイだけでなく性格も猫のようだった。可愛いげのある日本猫ではない。女神の如き品格を匂わせるエジプト原産の短毛種さながらだ。
人見知りで、冷淡な個人主義と感じさせる佇まいは、団体競技にはおよそ適さない空気を纏っていた。
それを緩和させ、メンバーを繋げ、部の盛り上げ役を買って出ているのは、ひとえにトワのためだ。
バスケが楽しめれば良いと主張する部員だって少なくなかった。そういう根本的な目的意識のズレを調整するのは困難を極め、今でも苦悩の種だ。その手の憂鬱を甘んじて引き受けるのも、トワのプレイを守るためだった。
いや、そんな、恩を売るようなものではない。
私なんて、自分でも否定できないほど激しく我が儘で自分勝手でいい加減なテキトー人間だ。バスケに関してだって例外ではない。
心酔しているトワの輝く舞台を作り上げることに尽力することが、そしてそのトワと一緒にその舞台に上がれることが、ひたすら至福だっただけだ。
そんな、感情的過ぎる気持ち1つで私は突っ走ってきた。
「サナは、私だけを見てて」
ぬけぬけと言い切るトワ。
普段、特に部内では、トワが浮かないようにするため、逆にトワを少し突き放して『仲の良いツッコミ相手』的な立場で関わっている。だからか、二人でいるときのトワはいつも強引で甘えただ。
それにしたって、最近のトワの様子は執拗とすら感じる。
私に愛されていることを疑わない強い眼差しが突き刺さって、ヒリヒリと焼けるように痛い。
「バスケがあるんだから、恋とか彼氏とかいらないよね?」
「いや、それとこれは違うし。てか、一樹はそんなじゃ」
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