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「びやく?」
「ん。惚れ薬。ほい」
トワがその指先を私の口へと突っ込んでくる。
知っていたけれどなかなかのデキだ。しっとりとした生地が絡み付くように甘い。
「どう?好きになった?」
「……好きだよ?」
「……サナが甘党だって話じゃなくてさ。媚薬の効果」
「……うん。好きだよ?」
ついぶっきらぼうに答えたけれど、しかしここまでくると可笑しくて、多少笑い声が漏れてしまう。
そこまで私からの好意を確認して、トワは何がしたいんだろう。
「……いや、うん、ありがと。
じゃなくてさ。サナが、サナのこと好きになったか聞いてるの」
予想外な台詞に、私の時が止まる。
何だそれ。
端的で飾り気がなく直球なトワの台詞は、端折り過ぎてやはりたびたび内容が掴めない。
「私はサナのプレイが好きだよ」
あぁ、帰着点はソコか、と。
ガッカリに近い感覚で、納得と同時に気分がストンと落ちるのが自分で判った。どんな話だろうと興味を持った分だけ、ため息も深くなる。
「ハイハイ、どーも。でもやだよ、主将は」
「サナ以上の適任なんかいないよ」
「そんなことはナイ」
私達一年の間でも、次期主将についての話が出始めていた。
トワのセンスは誰もが認めるところだし試合の内容を左右する重要選手と言えたけれど、豪腕で圧しの強いヨリコや、俊足で正確なパス捌きをするレイ、トリッキーな動きで敵陣営をかき回すと同時に味方の和をも乱しつつしかし誰より場の把握が早いミユキ。
主将候補は複数上がっていて、マネージャー的な役割を担っている私の出る幕はなかったし、私はそれで良かった。
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