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それだけ発したトワは、しかしその台詞の後、パクパクと口を開きながらも声が出ない。結局無言のまま俯いて、力任せにぐいっと腕で目を擦り、涙を払った。
「……サナが、一杯誉めてくれるのが、嬉しくて。サナの、キラキラした笑顔が、見たくて。
私には、それだけだった」
トワは、俯いたままだった。
ショートの軟らかな猫っ毛が、重力に引かれ、風に靡いる。それが如何にも頼りなげで、毛先から哀しみが零れ散っているようだ。
その様子に罪悪感が沸き上がり、途端に居心地が悪くなる。
「私なんかのために、サナが頑張ってくれるから、私も頑張らなくちゃって、思えた。
サナが私のためにあれこれしてくれるのが誇りだったし、その『特別』が嬉しかった。
でも、なんか、今。ちょっと辛い」
ここで間を開けて、沈黙しつつ。
俯いていた顔を少しだけ上げて、上目遣いに私を見るトワ。
恐々と私を窺っている。
しかし、口を開けたときにはもう、プレイするときの強い眼光を湛えていた。
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