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私が売った喧嘩を買うような形で張り上げたトワの声が小さくすぼまっていくのを、茫然と見守ってしまう。
しかし、私の気持ちが収まったわけでは全くなかった。
一度点いてしまった火は容易には消えてくれない。泣き腫らして尚泣き足りない風のトワの顔を見ながら、痛みや懺悔や負けん気や悔しさがない交ぜになって私の方こそ泣きたくなって。
……そして私は、トワを責め立てていた。
「ワケわかんないっ。見てほしいって言ったり、構うなって言ったり、何なのよっ!
私に対して放っとけって言うなら、トワこそ私なんか放っておいてっ!」
トワの矛盾がそのままトワの葛藤であることが、判らないなんてことはなかった。
トワが私を特別好いていることも実感していたし、私だってそうだった。
違う。過去形なんかじゃなくて、今だって、大好きなのだ。
私は何でこうも苛立っているんだろう。何に苛立っているのだ。
いや。確かに私はここのところずっとトワに対して、苛立ちを募らせてきた。八つ当たりとは言えない。
でも、こんな風に苛立ちを爆発させ、トワの気持ちを蝕むようなやり取りをするつもりは全くなかった。
なのに──
私は、どこで間違えたのだろう。
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