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私は、言い放った勢いのまま走りだし、トワを置いて公園を出ていた。
トワと向き合うことが辛いというよりも、それによって引き出される、どうしようもない訳の判らない自分をこれ以上認められなかった。
走るのは元々好きだ。
短距離で一気に走り抜けるのも爽快だったけれど、走ること一点に意識を集中させて無心にジョギングするのも気持ちが良い。
しかし今は、足をどれ程動かしても駄目だった。
せり上がってくる圧迫感やじわじわと締め付けてくるモヤモヤとした苦しさは、どれだけ強く速く走ってもその風に流されてはいかない。
走りすぎて、呼吸だけが荒くなる。
日が沈むと途端に冷たくなる空気が肺を満たし、それがまた苦しい。
というか、痛い。
痛かった。
……居たかった。トワの隣に。今も。これからも、ずっと。
*
「紗奈っ」
一樹が、うちの前で立っていた。
変質者か。
「あれは違うんだ」
……あれって何。
「三科さんは、部活の子で」
ぁあ、さっきの。
「婚姻届じゃあるまい、チョコくらい受け取れよって言われて」
どーでもいいわっっ!
心の底で盛大に叫びつつ、私の口も盛大に声を上げる。
「婚姻届じゃなかったら何でも受け取るんだっ。一樹は、相手は誰だっていんでしょうっ」
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