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「は?! そういう話じゃないだろ」
「でもそーゆーことでしょっ!」
「違うって」
「いーよっ! 私には関係ないしっ! 何にも、全然、関係ないもんっ!」
脈絡なく、トワの顔が浮かぶ。
関係ない、私はどうでも良い、そう繰り返すほど胸の締め付けは強くなり、苦しさが増した。
「私なんかっ」
「紗奈っ!」
一樹の激しい語気が珍しくて、思わず怯んでしまう。
途端に、私の勢いはかき消されてしまった。
消沈したのか鎮火したのか、思いも言葉も詰まりすぎて何も考えられなかった私の頭の中にも冬の終わりの風が通り抜けていく。
一瞬で空っぽになって軽くなり、そしてやはり、何も考えられない。
「紗奈。どうした?」
一樹の少し心配そうな、大丈夫だよとでも言いたげな揺らぎのない表情が懐かしい。
かつての、チョキを出す直前の顔だった。
「紗奈」
「一樹は、私のこと、好き?」
首を傾げて、無邪気なあの頃のままに尋ねてしまう。
間を空けつつも、硬直をすぐに解いた一樹が、
「…ん。好きだよ」
無邪気に、あの頃のまま笑う。
「私もっ、好きになりたい……っ」
なりたいじゃない。ならなくちゃ。
ようやく新たに感じ始めた決意が、ヒリヒリと喉を焼き付けていく気がした。
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