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ちーよーこーれーいーとっ
その言葉で私を笑顔にすることは、私がじゃんけんを正確に理解してからはなくなった。
そう、でも、以降は一樹自身が『ちよこれいと』だったのだ。
「紗奈は、紗奈が嫌いな奴を嫌えばいい。好きな奴を好きでいたらいい。やりたいことをやればいい」
「……それはちょっと、言い過ぎでしょ」
「やらなくちゃいけないことなんて、やりたいことに向かう手段の1つだ。やりたいことに向かっていくのが、やるべきことをこなす一番の近道だろ」
「……デキル奴の戯れ言って感じ」
「ばーか。それこそデキナイ奴の戯れ言だろ」
にっこりという音が出そうな満面の笑みで私を見ている一樹。
ちよこれいと、と唱えて私を喜ばしていた一樹は、今も変わってない。
そして、私もきっと変わってない。
チョコレートは媚薬なんじゃない、私の精神安定剤だ。
口の中がまだかなり甘ったるくて、それが、心地好かった。
一樹の瞳の優しい甘さも、ふわふわと心地好い。
「……私、バスケ好きかも」
「そか」
「私、そんなに下手じゃないよね?」
「…さぁ?」
「私、トワとバスケしたい」
「ん」
「ヨリコも、レイも、ミユキも、ナナミも、リクも、アイナも、スズコも、みんな好きなの」
「そか」
「でも私、嫌われたかも」
「そう?」
「でも、好かれたいの」
「……紗奈は結構心の中駄々漏れだから、頑張らないとな」
「……どういうこと?」
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