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「紗奈の中には間違いなく大切にする順位ができてる。そして、嫌いまではいかなくても苦手に感じる仲間がいる」
「私、そんな感じ?」
「そんな感じ。
それが情報として相手にもきっと伝わってる。
情報は、沢山持っている人間の方が有利だ。つまりこの件に関しては、自覚のない分、紗奈の方が不利なんだよ」
「不利って、何が不利なの?」
「紗奈は好かれたいんだろ? その目的を達成するのに不利だってこと」
「……相手を嫌いだって自覚することが、相手に好かれるって目的への一歩だってこと?」
「端的に言えばそうなるな」
「……でも、苦手だって自覚して、その後どうするの」
「さぁ」
「さあって」
「いつだって道は複数ある。『好かれたいと思っている相手を自分は嫌っていた』ことを認識した場合、まずは『嫌いな相手に、本当に好かれたいと思っているのか』という目的そのものを見直すってこともアリだと思うし」
「……そぅか……」
「アイツとまた相談すればいいじゃん」
トワの泣き顔がフラッシュバックした。
グッと胸が詰まる。
「っ、でも……っ」
「……何だ、ケンカしてたのか。じゃあ先ずは、それが目的だな」
「目的?」
「仲直り」
トワの泣き顔に責められているような今の心境で、安易に仲直りなんて言葉を出すことは、何だか憚られた。
あんな捨て台詞の後に、「謝るから許して~ェ」的な顔をして飄々とトワに相談するなんてキツ過ぎる。
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