チヨコレイト

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 よくわからない焦りに囚われ、小走りに近付いてくる一樹に視線を向けることができない。  とは言え、露骨に顔を逸らすことは憚られて、曖昧に笑うことでお茶を濁すつもりだった私の腕が、唐突に力強く引っ張られた。   「行こ」 トワに、強引に連れ去られる。 「えっ、ちょっと」  非難するような言葉を吐きつつも、私にとってそれは、これ以上なく都合のいい逃避だった。  一人だったらきっと、立ち尽くしていた。  そして、聞きたくもない色々な話を一樹から聞き、笑いたくもないのに笑わなければならなかったろう。  狡さを承知してはいたけれど、私は、連れていかれる体でその場を足早に離れていった。 「あいつが好きなの?」  行き着いた先は、近所の小さな公園だった。  小さすぎる敷地に唯一あるのは、申し訳程度に置かれたカバの形の小さな砂場。  私たちの他そこには誰もいない。  つい半月くらい前は、闇の訪れはもっと早かった。私たちの間を吹き抜ける風はまだ冷たさをはらんでいるのに、部活帰りでも残照が辺りを色付けていた。  その明るさが、トワの真剣な思いを真っ直ぐ私に突き付けてくる。 「……好き、って、言うか」 「ダメだよ。彼氏とか、認めない。私を誘ったのはサナなんだからね。責任とってよ。ちゃんと」 「トワ」 「私を本気にさせたの、サナだよ」
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