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確か巴さんがそう話していた。
スリッパをパタパタ鳴らして
近づいてきたかと思うと、
烏丸さんはいきなり私の手を握る。
「大丈夫でしたか?
俺、小野寺先生の担当なんですけど、
昨晩、巴さんからマミ先生があの人に
連れ去られたと聞いて。
残念ながら俺の方は接待が有って、
どうしても抜け出せなかったんですが、
マミ先生の身に何かあったらと思うと
本当にもう心配で心配で…」
はあ、まあ、それは。
曖昧な返事をする私。
カオルには何もされていませんけど、
ナカダ氏の方にされそうでしたとは、
口が裂けても言えない。
「ていうか中田さん、今朝4時頃まで
竜ケ崎先生のところにいたんでしょ?
そのままマミ先生を迎えに来るとは、
体力あり余ってますね~」
ぎょぎょつ。
寝ていないのではナカダ氏。
慌てて隣りを見ると、
顔色がより一層、激ワルになっており。
彼は私の耳元でこう言った。
「トイレ行って抜いてくる。
そのままお前のマンションに戻るから、
ちょっとだけ寝かせてくれ」
「ハッ!かしこまりました」
ナカダ氏の名誉を守るため、
彼の下腹部の異変に気づかれぬよう、
私は烏丸さんと先にリビングへと戻り。
再びカオルが膝の上に
私を乗せようとしたので、
さり気なくこれを回避したところ、
ソファの端まで烏丸さんに追い込まれ。
テンション高めなその口説き文句に、
半分眠りそうになっていた。
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