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「拒否とかそんなんじゃなかったんだな……」
「あ、当たり前だよ! 私が京本くんのこと拒否するわけない!」
そう言うと京本くんは顔をそらした。その耳は赤く染まっている。
「書いたはいいけど出す勇気はなくて、ずっと机にしまってたんだ。こんなんじゃ覚にヘタレって言われるのも仕方ないよな……」
力なく笑った京本くんが、「またね」と別れを告げた時の京本くんと重なった。
「こんなの一種の賭けだよ。手紙が本人に届くのか、届いたとしても佐伯が来てくれるのか。そんな保証はどこにもないのにさ」
その手紙が今日、私の元に届いたのだ。たまたま実家に帰って来ていた、このタイミングで。三月一日の、卒業式の日に。
これはもう、運命だと自惚れてもいいんじゃないだろうか。
「……覚くんの言う通り。私、差出人が京本くんだったらいいなって期待してここに来たの」
「え?」
「卒業式の日。私も京本くんに言えなかった事があったから」
京本くんが真剣な顔をして「佐伯」と名前を呼ぶ。私は彼を静かに見上げる。
「卒業式の日に言おうとしてたんだけど、どうしても言えなくて。俺、ずっと後悔してた」
「……うん」
「俺、高校生の時からずっとお前の事が──」
私たちの初恋は、弟くんの粋な計らいにより無事に卒業する事が出来た。
私はこの時、これからも少女漫画を読み続けようと心に誓ったのだ。少女漫画脳バンザイ!
fin.
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