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私たちの間に流れるのは、妙な緊張感と静寂だった。
今度その沈黙を破ったのは他でもない、私自身である。
「覚くん、京本くんにそっくりだね」
「……そうか?」
「うん。すごく似てる。私もしかしたら高校時代にタイムスリップしちゃったのかもって割と本気で思ったもん」
「なんだよそれ」
「それか京本くんの幽霊なのかなって」
「勝手に人を殺すな。ったく。相変わらず単純っつーか、純粋っつーか……」
「それさっき覚くんにも言われたんだけど、馬鹿にしてるよね?」
「うん」
「うわ、ムカつく」
はは、と笑い声を上げると、少しだけ空気が軽くなった気がした。
「……佐伯は、県外の大学行ったんじゃなかったっけ?」
「うん。そうなんだけど今たまたま帰省中で。こっちの会社に就職決まったから、その準備に」
京本くんはばっ、と首を動かして勢い良く振り向いた。
「ま、マジで? 戻ってくんの? こっちに?」
「うん。四月から」
「うわ、マジか!」
京本くんが嬉しそうに笑うのを見て、なんだかくすぐったい気持ちになった。
「京本くんはこっちで就職したんだよね?」
「そう。毎日スーツ着て頭下げながら営業行ってる」
「へぇ。すごいね」
「どこがだよ」
「土下座のプロ的なとこ?」
「言っとくけど土下座まではしてないからな」
私はふぅ、と息を吐いた。
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