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「……びっくりしたよ。急に手紙が届いて」
京本くんの瞳が揺れる。
「……俺だってびっくりしたよ。突然覚から"今佐伯さんと一緒にいるんだけど"ってメッセージきてさ。頭おかしいんじゃねーのコイツって思ったし」
それに……と言葉を区切ると、京本くんは躊躇いがちに言葉を発した。
「机の手紙送っといたからとか、早くしないと帰っちゃうよとか次々メッセージ来て。訳分かんねーけど気付いたら家飛び出してた。佐伯に会えるかもって思ったら、体が勝手に動いてた」
ドキリと胸が高鳴った。
「あの手紙は、卒業して半年くらい経ってから俺が書いた奴なんだ」
ということは、あの手紙は五年も前に書かれたことになる。
あの短い文章を書くのでさえ相当な時間がかかったんだろうな、と机に向かって云々唸る姿が容易に想像できた。
「会えなくなれば忘れられるかなって思ってたのに全然忘れらんなくて。とりあえず書いてみたんだよね。……メールしてもエラーで返ってきたし」
「えっ!? 嘘!?」
「嘘じゃねーよ。あん時俺どんだけへこんだと思ってんの?」
エラーで返ってきた!? そんなバカな!! 京本くんにはちゃんと連絡先教えてたはずなのに! なんで!? 私はぐるぐると過去の記憶を探り出す。
「…………あ」
そして、思い出した。
大学生になったばかりの頃に、不注意で水没させてしまった前のスマホの存在を。
「ご、ごめん! 前のスマホ水没させちゃって! その時データ消えたから、たぶんその時に……」
あの時は本当に大変だった。色んな人と連絡取れなくなっちゃったし。
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