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"「元気でな」 「うん……またね」" そう言って、結局何も告げられずに終わった高校の卒業式。 あれから何年の月日が経とうとも、この季節になると必ず思い出してしまう。我ながら随分と女々しいものだ。 はぁ、と小さく溜め息をついて郵便受けを開ける。 するとそこには、茶色い封筒に入った一通の手紙がぽつんと置いてあった。 真ん中には黒のボールペンで『佐伯綾子様』と私の名前が書かれている。消印は昨日のものだ。 裏返してみても差出人の名前は見当たらない。 不思議に思いながらも、私はしっかりと糊付けされたその封筒を開けてみた。 「……え?」 中から出て来た便箋には、二行ほどの短い文章が並んでいた。 『佐伯さんに伝えたいことがあります。  三月一日。月森高校の校門に来て下さい。』 これは何かの悪戯だろうか。私の眉間には自然とシワが寄る。 便箋の中にも名前は書かれていなかった。やっぱり悪戯かな……とは思うけど、この筆跡には見覚えがあるような気がして胸がざわざわと落ち着かない。 思い出すのは、数年前の高校の卒業式。 …………まさかね。 いい歳して何をこんな夢見がちなことを。少女漫画脳を払拭するようにぶるぶると首を左右に振る。 ていうか三月一日って……今日じゃない。
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