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手紙には場所こそ書いてあるものの、時間の指定はされていない。 現在の時刻、午後四時。 今から行ったとして……十五分はかかるだろうか。いや、でもこの手紙の主がこの時間まで待ってるかどうか確証はないし。 ……いやいや。何ちょっと行く気になってるのよ私。 こんなの悪戯に決まってるでしょう? 差出人もないし。だいたい、用があるなら電話とかメールとか、もっと方法があるじゃない。なんでわざわざ手紙なんか……。 私は封筒を持ったまま立ち尽くす。 ……ああもう! 気になるものは仕方ないじゃない。だって筆跡似てるし。日付も三月一日とかあの日の続きみたいだし。少女漫画みたいな展開期待しちゃ悪い? 妄想するぐらいいいじゃない。 行っていなかったら戻ってくればいいだけの話だし。うん。誰かに迷惑かけるわけじゃないんだし。うん。 頭の中でつらつらと言い訳を並べながら、私はしっかり防寒対策をしてブーツを履いた。 「……ちょっと出掛けてくるー」 あっそ。じゃあ帰りに牛乳買ってきてー、なんていう母親の言葉は聞かなかった事にして、私は足早に玄関を出た。久しぶりの帰省だというのにうちの家族はみんな塩対応だ。 まぁ、地元に就職が決まって、みんな私が戻ってくるのを知ってるからだろうけど。 ほぅっと吐き出す息は白い。 私は母校である月森高校へと急いだ。
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