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「ふふっ。歴史の時間とかよく筆談してたよね。あれ笑い堪えるの大変だったなぁ」
ぽつりと呟けば、京本くんも話にのってきてくれた。
「絵でしりとりとかしたよな。お前の絵めちゃくちゃ下手くそだったから解読するのに時間かかったっつーの」
「そ、それはお互い様でしょ! 京本くんだって絶対馬にしか見えないのに犬だって言い張ってた絵あったじゃん!」
「ニワトリが宇宙人になってたお前に言われたくない」
私たちは顔を見合わせて一斉に吹き出した。
「…………本当に京本くんなんだね」
「なに? 偽者だと思ってたの?」
「そうじゃないけど。……制服着てるし。だって私たちもう二十三でしょ? それなのになんていうか、当時のまま変わってないっていうか……」
俯きがちに言うと、京本くんは大きな声で笑い出した。
「あっははははは! くふっ! ふふっ!」
「……き、京本くん?」
「ご、ごめんごめん。佐伯があんまりにも単純っつーか純粋だからっ」
単純? 純粋?
……なんだろう。馬鹿にされてるっていうのは分かるけど、何が原因でこんなに笑われているのかさっぱり分からない。私の頭は疑問符で埋め尽くされた。
京本くんは教室の壁掛け時計を見てぽつりと呟いた。
「……そろそろかな」
「え?」
「"本物"のご登場だよ」
その台詞の直後、見計らったかのようなタイミングで、廊下をドタバタと走ってくる騒がしい音が響いてきた。
その足音は真っ直ぐこの教室に向かってくる。京本くんの口はにんまりと弧を描いていた。
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