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……ちょっと待ってよ。 ってことは年齢的に考えて、ドアの前にいるダウンジャケットの彼が本物の京本くんで、制服の彼は京本くんの弟ってこと!? そういえば彼がここに飛び込んで来た時"さとる"って呼んでたっけ。京本くんの下の名前は"わたる"のはずだ。 ええ!? てことは私、今まで彼の弟くんと思い出話してたわけ!? はっ、恥ずかしい!! ていうかなんで筆談の事とか知ってるの!? 「お前な、いい加減にしろよ!!」 「いい加減にしてほしいのはこっちだよ。高校時代の初恋拗らせてズルズルズルズル引きずって。女々しいにもほどがあるっつーの」 大人の、いや、同級生の京本くんはぐっと押し黙る。 「それよりいいの? せっかく佐伯さん来てくれたのに」 ぴくりと肩が動いて、それからぎこちなく京本くんが私の方を向いた。京本くんの真ん丸い瞳の中に、口を開けたままの間抜け面を晒した私が映る。 ごくりと喉が動いて、ゆっくりとその薄い唇が動いた。 「……佐伯……か?」 「う、うん。……京本……航くん?」 「……ああ」 そう言ったきり、気まずい沈黙が流れる。聞きたいことはたくさんあるのに、私の残念な頭は混乱しすぎて本来の機能を失ってしまったようで、まったく働いてくれない。 その沈黙を破ったのは京本くんの弟である覚くんだった。
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