第7話

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「きちんと放火犯の証言をして、大須の街を守ってください」  吉崎は思い切りおおきな声を腹の底からあげた。 「はい、わかりました。せなちゃん、ありがとう」  行進でもするように胸を張り、ストーカーが交番にむかっていく。そこでは若い巡査がなにか書類を書いていた。ハバがいった。 「これで一件落着か」  信吾は首を横に振った。 「いいや、あともう一件だ」  自分のスマホをとりだすと、信吾は昔からの友人の番号を選び、呼びだし音を待った。 *  5人がむかったのは、いつものカフェだった。深夜2時近くだったが、ローズガーデンはまだ半分の席が埋まっていた。いつもの2階の窓際に腰を落ち着ける。ハバと綾火はお腹が空いたといって、ナポリタンとオムライスを注文した。残る3人はドリンクだけだ。 「斎藤くん、くるかな」  せながぽつりといった。東仁王門通りの中古電気店の火災は、消し止められ怪我人はでていなかった。信吾はいう。 「絶対にくる。今夜のボヤ騒ぎで放火犯の目撃者がいたらしいと匂わせたから。吉崎はまだ証言をとられている最中で、まだ世のなかにでていない特ダネだ。大須の街の噂にもなってないくらい。おれだったら、絶対どうなっているのかしりたくなる」  綾火がオムライスをたべるスプーンを休めて、じっと信吾の顔を見ている。
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