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「なんだか、信吾さびしそうだね」
「ちょっと疲れただけだ」
信吾は胸のうちにひとつの仮定を沈めていった。もし自分が放火に関係していたら、目撃情報を確認せずには、今夜は眠れないだろう。いっそのこと、斎藤聡がこなければいいのに。そう思って、苦いカフェラテをひと口のんだ。大輔がいった。
「あっ、サトシ」
階段をあがって、一段ずつ斎藤聡の姿が見えてきた。ニット帽にレザーブルゾン。さすがに年収1000万を超えるだけあって、大輔よりも高級なブランド品を身につけている。ハバが手を振っていった。
「おー、こっちこっち。座れよ、サトシ」
神経質な様子でサトシがスツールに腰かけた。注文をとりにきたウエイターにアイスコーヒーとひと言だけいう。信吾はずばりと切りだした。
「今夜おれたちはドールズについていたストーカーを捕まえた。そいつが驚くようなことをいった。東仁王門通りの電気屋に放火していたふたりの男を見た。そいつらはサテンのジャンパーを着ていた。背中にドラゴンの刺繍がついたやつだ。ひとりはハバにも負けないくらい背が高くて、もうひとりは……」
途中からサトシががたがたと震え始めた。せながやわらかにいう。
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