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前の街を出てから随分時間が経った。そろそろ頃合いだろうか。一度高い所から眺めてみるか。朽木は気に入った街を見つけると、いつもこうやって、高い所から街全体を眺めるのが好きだった。
彼の場合、わざわざ展望台を探したり、高いビルを探す必要は無い。何故なら、彼は自力で高い所へ飛んでいくことができるからだ。何と言っても、彼はとうの昔に死んでいる。今の彼は、言ってしまえば幽霊ということになる。生きていた頃から旅人だった朽木は、今も終わらない旅を続けている。
空高くまで飛んだ朽木は、しばらく街を観察した。前の街より、随分と賑やかそうだ。ちょうど夏休みに入ったばかりだし、お祭りでもやっているのだろうか。商店街を眺めていると、なんだか懐かしい気持ちになる。この街はなかなか良さそうだ。
朽木は早速、商店街の方へ降りてみることにした。
商店街ではスピーカーから祭囃子が流れている。道端にはヨーヨー吊りや、綿菓子などもあった。思った通り、何かイベントの最中のようだ。良いタイミングに来れたものだ。
朽木は祭りの雰囲気を味わいながら、通りを歩いていた。道行く人は、みんな浮かれて楽しそうだ。朽木もだんだん楽しい気分になってきたが、しばらくしてから、妙なことに気付いた。
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