別れと出会い

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 彼の後をつけている者がいる。もちろん、幽霊である彼は、普通の人間の眼には見えない。それに、幽霊に用があるというのもおかしな話だ。確かめたいが、こう人が多くては難しい。  朽木は小道に折れると、雑踏を離れて人気の無い場所を探した。ちょうど、すぐ近くに神社があったので、彼は鳥居を潜り、境内で振り返った。追ってきた方も境内に姿を現す。  そこに現れたのは14、5歳くらいのセーラー服姿の少女だった。長い黒髪で、前髪が目の上で綺麗に切りそろえられている。地元の中学生だろうか。 「あなた、幽霊?」  少女は真っ直ぐ朽木の方を見てそう言った。どうやら彼女には朽木がハッキリと見えているらしい。その割にはあまり怖がってるようにも見えない。朽木は不思議に思いながらも、とりあえず自己紹介をすることにした。 「こんにちは、お嬢さん。僕は朽木。そうだね、一般的には、僕は幽霊と呼ばれる存在だと思う。いろんなところを旅していて、この街にはさっき着いたばかりだよ。ところで、どうして君には僕が見えるんだろう? 生きてる人の目には見えないはずなんだけど」 「だって、私も幽霊だもん」
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